2014
10.15

啄木 3

Category: 短歌
(9月予約投稿)

忘れがたき人々 より


火をしたふ虫のごとくに
ともしびの明るき家に
かよひ慣れにき


きしきしと寒さに踏めば板軋む
かへりの廊下の
不意のくちづけ


波もなき二月の湾に
白塗りの
外国船が低く浮かべり

葡萄(えび)色の
古き手紙にのこりたる
かの逢引きの時と処かな


世の中の明るさのみを吸ふごとき
黒き瞳の
今も目にあり


死ぬまでに一度会はむと
言ひやらば
君もかすかにうなずくらむか


わかれ来て年を重ねて
年ごとに恋しくなれる
君にしあるかな


石狩の都の外の
君が家
林檎の花の散りてやあらむ

死にたくはないかと言へば
これ見よと
喉(のんど)の疵を見せし女かな


今夜こそ思ふ存分泣いてみむと
泊まりし宿屋の
茶のぬるさかな

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